同じ環境を異なる言語集団がどのように利用しているのか、そこにどんな違いがあるのか、地理学からみても面白いテーマとなる。1980代に、南チロルを研究しているR大Y氏に連れられて、この2つの村を訪ねたことがある。昨夏、チロルを広く回ってみた折に、再びこの両村に行ってみた。
「ドイツ語民の村であるSt.Felixは散村であり、かたやイタリア語民の村Tretは塊状村である。」言語集団毎に、住むかたち、集落形態からして違っていると、かつて訪れた際に撮影した写真をもとに授業で教えていたものである。今回行ってみて驚いたのは、散村であったSt.Felixの中心部に新しい住宅が多数建てられ、集住傾向にあること、一方で、塊状村であったTretの集住部の外に、新たな住宅が点在して建てられ分散傾向にあることであった。しかも、これら新しく建てられた住居は、どちらの集落においてもベランダをもち、その手すりに花を飾る、チロルによくみられる様式をとっていた。すなわち、集落の形態においても、建築様式においても、ドイツ語民の村、イタリア語民の村、双方において近似化、あるいは収斂がみられるといえよう。
St.Felixの中心部 |
Tretの周辺部 |
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