2015年5月30日土曜日

川崎エクスカーション(3)

 川崎駅東口では、閉店セールをやっているさいか屋の前を通り、チネチッタ通りにまずは向かう。ここは今回、楽しみにしていたところでもある。立澤(2013)によると、この通りには、1987年、シネマコンプレックス「チネチッタ」が開業する(日本初とのことだが、ほかでも日本初を主張しているところがある(Wikipedia))。そして、2002年に、映画館、ライブ・ホールに加えて、物販店や飲食店、スポーツ施設などを有する複合商業施設「ラ チッタデラ」として再スタートした。ラ チッタデラはイタリア語で小さな街、イタリアの町並みをイメージして建物の外観、石畳の通りが造られたという。歩いてみると、それっぽい雰囲気。土曜の午後ということもあり、歩く人も多く、通りに面するカフェテリア、レストランのテラス席で、談笑する姿がみられる。この地に詳しい同行の学生によると、少し前までは、閑散とした通りであったとのこと。実際、西口のラゾーナの開店などの影響があるようである。確かに借り物の街並みであり、景観のイミテーションである。川崎という土地に根ざしたものでもなく、企業によって造り出されたものである。某巨大テーマパークもしかりである。だが、そこには、イミテーションと知りつつ、あえてその中につかの間、入り込んで楽しむ成熟した消費者がいる。街中の商店街もまた、テーマパークのように、一時の夢の中に誘い込むように仕掛けなくてはいけないのではないか。

 この複合施設ラ チッタデラが位置するチネチッタ通りの前後、そして横町にも、クラフトビールを飲ませる店など、小洒落た飲食店ができている。旧来の商店、飲食店もあるにはあるが、周辺への「イタリアの小さな街」というテーマの波及がみられ、通り全体、そしてこの地区一帯で、いわゆるジェントリフィケーションが進展しているようにみえる。川崎小川町バルとして、イベントを開催、プロモーションもしており、これには行ってみたい、と思う(http://lacittadella.co.jp/ogawachobar_map/#stacktitle1)。さて、チネッチッタ通りから横丁に入って、ラ チッタデラの運営会社チッタグループの歴史を紹介する歴史ギャラリーをみつけ、のぞいてみる。この会社は、1922(大正11)年に、日暮里で映画館の経営を始め、1936(昭和11)年には川崎で、そしてその後も各地で映画館を開設した。昭和30年代のこの地区の地図が展示されていたが、川崎映画劇場、川崎スカラ座、川崎名画座、川崎大映、川崎東映、川崎日活など多くの映画館が立地していた。加えて、スケートリンクなどをもつスポーツセンターやボーリングセンターがあり、バーや喫茶店もある。川崎駅前にあって、この地区が娯楽の場であり、それが今日まで、かたち(景観)を変えて持続しているともいえる。一緒に見学していた学生らに、「誰か、ここをテーマに卒論を書いてみたら?」

  チネチッタ通りを後に、銀柳街へ。某学生は、行くのが怖いという。彼にとっては、治安の悪い場所であり、近づきたくないところであるらしい。土曜の真っ昼間、そんなことはないだろうと無理矢理連れて行く。案の定、アーケードのあるしごく普通の商店街。「普通」と言っても普通ではないかもしれない。駅前のアーケードのある商店街であるからには、ある意味、その街の中心商業地であっただろう。しかし、今、目前にしている商店街は、どこにでも見かけるチェーンの飲食店やドラッグストアやカラオケ店、、、。地場の老舗の物販店などはみられない。それなりに歩く人で賑わっており、シャッター通りにはなってはいないが、こうした状況は、商店街の衰退を示しているともみてとれる。ドイツの中心商業地でもみられるように、金太郎飴的な同じような店舗構成の商店街が各地にできているのではないだろうか。銀柳街から脇道に入ると、歓楽街、昼間から営業している店もある。けっこうな規模であり、この機能の集積は大きい。

 やがて我々は旧東海道にでる。ビルが建ち並び、すでに宿場町の面影はない。駅周辺との競合から商業の立地も乏しく、マンションの建設が進んで居住機能の強化が進む。街道に沿って間口が狭く奥行きが長い細長いマンションが目立つ。宿場町の地割りが今日のマンションの形態を規定しているわけである。街道沿いに沿って東京方向に歩くと、都市銀行の川崎支店、川崎信用金庫の本店をみる。これらの存在は、かつて旧東海道沿いが、街の「中心」であったことを物語ってくれる。川崎信用金庫の広場では、女性ボーカルが歌う。川崎宿の中でもこのあたりはいさご通りといい、月に一度、若いミュージシャンによる無料野外コンサート「いさご通り街角ミュージック」を開催しているようである(http://ameblo.jp/isagomusic/)。あまり観客も多くなく、街づくり、街おこしとして効果のあるイベントともみえなかったが、我々の訪れた週末は、162回、163回にあたり、かなり長く継続しており、それなりに定着しているイベントといえる。音楽を通したまちづくりといえば、仙台の定禅寺ストリートジャズフェスティバルが有名である。 メジャーなミュージシャンを呼んできて、人を多く集めればよい、というわけでもないだろう。地元の人々が、地元の若い音楽家の声、音に耳を傾ける、、、それはそれでよいかもしれない。東海道かわさき宿交流館で展示をみて京急川崎駅へ。

 
 
 

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