2015年5月26日火曜日

川崎エクスカーション(2)

   再び南武線にて、川崎方向へ。右手にみえる渡り廊下で結ばれた高層ビル2棟はNEC多摩川ルネッサンスシティ。ここもまた研究開発拠点である。鹿島田駅前にもまた、高層マンションが数棟。武蔵小杉の開発とそれによる価値の上昇が、周辺地域に及んでいると言うことではないか、と言うと、「横須賀線の新川崎駅が近いですからね」と返す学生。こういう切り返しはうれしい。

 川崎駅の東西を結ぶコンコースは、待ち合わせの人、行き交う人でごった返している。まず西口のラゾーナ川崎プラザへ向かう。2006年に、東芝の工場跡地にオープンしたこのショッピングセンターは、約300店舗を有し、売り上げ日本一(約700億円、2011年)のショッピングセンターであるという(立澤芳男 2013. 立澤芳男の商業施設見聞記|第2 ラゾーナ川崎プラザ.  ハイライフ研究所. http://www.hilife.or.jp/wordpress/?p=7481)。「売り上げ日本一」に学生らは驚く。なぜ、これほどの売り上げを誇るのだろうか、と問う。元来、東京近郊地域は、人口に比して商業施設は少なかった。東京のもつ商業機能に依存し、顧客が東京へ流出していたわけである。商業施設をそこにつくれば、顧客はいる。一方で、近郊に立地していた工場が、より外縁部へ、あるいは海外へ移転することで、商業施設のための用地が生み出された。ここラゾーナ川崎プラザと同様、かつての工場用地を転換して商業施設とする例はここそこにみられる(埼玉県南部にも多い)。ラゾーナの場合は、立澤(2013)によると、商圏は地元、川崎区、幸区にとどまらず、南武線沿線、そして、大田区や品川区にまで広がっているという。東京へ消費者が流出していた状況から、東京から流入するような逆の流動が生まれているわけである。

 工場用地の転換は、商業施設へばかりではない。このラゾーナの東に隣接して、高層マンションが建てられているが、これも東芝の跡地であり、ショッピングセンターと併せて開発されたものである。さらにその東のオフィスビル「ソリッドスクエア」は明治製菓の工場跡地に建設された。生産の拠点である工場が、研究開発拠点へ、商業・業務施設へ、そしてまた、住居へと転換する一方、小川(2003)によると、そのほか、学校に転換されたものも多いという。

 ラゾーナに隣接する東芝未来科学館を訪ねる。 東芝と川崎との関わりについてなんらかの情報が得られるかと思っていたが、それについてはほとんどない。他の工場と同様、より広い敷地を求めて、東京から外方へ、ここ川崎に進出したと言うことか。原発までも造る東芝は、重電メーカーというイメージをもつが、日本初の電気洗濯機、電気冷蔵庫、自動電気釜を造るなど、由緒ある家電メーカーでもあることを、展示をみて知る。世界初のラップトップPCも展示されている。ちなみに、私が初めて買ったノートPCは、東芝製ダイナブックであった。dynabookJ-3000SS、価格は19万8千円、当時のF1レーサー鈴木亜久里がキャラクターに用いられてたことを覚えている。実は今また、ダイナブックを使っている。dynabook satellite T954、ハードディスクもなく画面もモノクロの初代ダイナブックとは隔世の感がある。

 老若男女で賑わうラゾーナのフードコートにて昼食後、川崎駅東口へと移動する。日本の駅には表と裏がある。多くの場合、旧街道に沿って鉄道が敷設されてきた。 そして、駅の出入り口が、旧街道側に設けられることで、駅前から旧街道にかけて商業の集積をみる。一方、駅の反対側は、駅へのアクセスも悪く、開発されないままか、倉庫や工場が、あるいは住宅が立地する。やがて、この裏側にも駅の出入り口が開設されて、開発が進展することになる。駅への近接性といった点では、表側とは遜色はないので急速に開発が進むことになる。川崎の場合、西口ラゾーナ側が裏で、東口、旧東海道側が表といえる。川崎の場合、加えて、東口には、京急が通り、京急川崎駅もある。川崎駅東口前には、さいか屋や川崎ルフロン、川崎モアーズ、DICEなどといった大型商業施設が位置する。立澤(2013)によると、東口の大型商業施設としては、1951年の小美屋デパート開店が最初で、1956年にさいか屋ができる。1996年に小美屋デパートが閉店し、跡地がDICEとなった。そして、さいか屋は、この日、閉店セールをやっており5月いっぱいをもって店をたたむという。また、1988年に西武と丸井を核としてできた川崎ルフロンから、2003年に西武が撤退している。このように旧来の百貨店が次々と撤退してきてはいるが、その跡地がまた別の様態のショッピングビルとなるのは、東京近郊ならではのことではないだろうか。

 

 
 

 


 

 

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