2016年2月10日水曜日

Combined Transport

  スイス航空にてチューリッヒに入る。チューリッヒ空港からベルンまで、インターシティ特急にて乗り換えなしで移動した。スイスといえば、アルプスの山で囲まれた印象だが、スイス北部は丘陵地帯であり、チューリッヒからベルンまでは、なだらかな丘陵の間を東西に流れるアーレー川に沿って列車は走る。途中は中小の都市が並び、多くの工場や郊外型のショッピングモールが次々に現れ、この区間がスイスの経済にとって重要な地帯であることがみてとれる。スイスの経済の中心軸は西はローザンヌからジュネーブ、そして東はサンクト・ガレンまで拡張してみることもできようが。途中、いくつもの大規模な操車場があり、駅には荷物の積み下ろし用プラットフォームがあったり、工場や倉庫への引き込み線があったりする。日本でもついこの間までよくみられた風景であり、鉄道による貨物輸送がスイスにおいては一定の位置を占めているとことがわかる。
 ベルン駅前のホテルに投宿。学生の時に訪れて以来なので、二十数年ぶりとなろうか。駅前には、何系統ものバスや路面電車の停留所が集約され、平面で乗り換えできるようになっている。また、駅に直結したビルに駐車場や駐輪場が設けられている。
 これらは、実はドイツなど他のヨーロッパ諸国でも同じようにみられることである。そこで実践されていることは、Combined Transport、複合輸送(この訳でよいのかわからないが)である。複合輸送とは、人や物の輸送を一つの輸送手段のみに頼るのではなく、場面場面に応じて適した輸送手段を複数用いていく、そして、複数の輸送手段の適切な接続を図っていくことである。
 飛行機が運んできた人を今度は鉄道で目的地に運ぶ。空港の集客圏、すなわち後背地は一般に広く、中長距離列車が空港からの輸送を担う。チューリッヒと同様、パリのシャルル・ドゴール空港や、フランクフルト空港に、それぞれTGV、ICEといった特急列車が乗り込んでいるのも、輸送の合理的な分担を図ろうとしていることによる。羽田空港に上野東京ライン、あるいは新幹線が乗り入れているようなものである。
 物資についても同様で、鉄道が担うに適したところは鉄道で、トラックが担うに良いところはトラックが運べばよい。この点において、スイスでは貨物輸送において、鉄道にもある重要な役割をもたせているということであろう。翻って、日本においては、かつてあった操車場や貨物用プラットフォームはものの見事に少なくなってしまった。大宮操車場はさいたま新都心として生まれ変わり、高層ビルが立ち並ぶ。東京のもつ機能の一部を担う場所となっているが、ほかの使い方があったかもしれない。
  ドイツなどヨーロッパでは、エコ!な意識が高まり、公共交通機関へと一方的に移行しつつあるという印象をもっている人も多いかもしれないが、実はそうでもない。自家用車の利用を全く妨げているわけでもないし、自家用車が担うべき個所もそれなりに位置づけられており、したがって、駅に直結して駐車場が設置されているわけである。加えて、自転車も自転車で一つの輸送手段として複合輸送の中で位置づけられ、鉄道など他の輸送手段との合理的な接続が試みられている。
 飛行機、鉄道、自動車、バス、路面電車、自転車、これら輸送手段の合理的な分担、そして接続、すなわち複合輸送が、スイスのみならずヨーロッパにおいて図ろうとされているわけである。 そこでは、輸送あるいは交通がトータルに捉えられおり、ある場所に住む人が、別のある場所に移動する合理的な手段を確保しようと試みられている。ヨーロッパにおいて、人々に移動手段を提供するのは、ガスや電気、水道などを提供すると同じことなのである。
 

チューリッヒ空港駅にて

ベルン駅前の停車場。いわゆるトランジット・モール?

駅直結の駐車場と駐輪場入り口

駅駐車場入り口

駅駐車場構内

おまけ。ベルンの街。

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