2016年2月26日金曜日

ショッピング・ステーション

 「EUでは、、、」という言い方と、「ヨーロッパでは、、、」という言い方と、適当に使ったりしているが、むろん厳密には区別しなくてはいけないであろう。今回、久しぶりに訪れたスイスはヨーロッパに位置するが、EUには加盟していない。とはいえ、他のEU加盟のヨーロッパ諸国にみられると同様の都市や農村の変容があり、都市計画や地域計画において同様の方向性を有しているように思えた。(逆にEUに加盟していないスイスならでは、という特色にどんなものがあるだろう?)


  今回、スイスでは、チューリッヒ空港駅からベルン駅に降り立ち、ベルン駅からインスブルック駅に行く途中で、チューリッヒ駅で乗り換えをした。ベルン駅もチューリッヒ駅もとてもきれいに改修されており、同時に、駅構内に、それぞれ地下部分(ベルンでは駅ビルの2階、3階にも)に、多くの店舗が設けられていた。このように駅に多くの店舗が、まるでショッピング・センターのように配置されるのは、ドイツやオーストリアなど他のヨーロッパ諸国でもみられることである。


ベルン駅地下。中央は、中世都市の遺構。

遺構を活かしたカフェテリア。
チューリッヒ駅コンコース。この地下が下の写真。

チューリッヒ駅の地下。まるで地下商店街のよう。

 1992年に初めて旧東独のライプチッヒを訪れた時に、中欧最大とうたわれたライプチッヒ中央駅は、薄汚れていて改修工事の真っ最中であった。ところが、その後、再訪した際には、見違えるように駅はきれいになり、加えて、駅舎の地下2階、3階部分が、多くの店が並ぶモールになっていた。同じように、駅を改修して店舗をおくことは、その後、ドイツのあちこちの駅でみられたことである。

 日本でも、たとえばJR東日本がecuteと称して、駅ナカの商店街をつくろうとしているが、同じようなことが日本に先行してヨーロッパでもなされてきたといえる。 背景にあるのは、ひとつには店舗の営業日の規制である。近年、ずいぶんと規制が緩和されてきたとはいえ、日曜祝日の営業は、多くの国で規制されており、できたとしても年間何日とか定められている。ただし、例外があって、駅や空港、あるいはガソリンスタンドは、日曜祝日でも営業が認められてきた。旅行者、移動する人々の便宜を図るためである。したがって、お店があったとしても、サンドイッチや飲み物を売る店があったり、スーパーがあったとしても、規模も小さく品揃えも少なく、必要最小限の需要を満たすだけのものであった。ところが、上述のような駅の改修によって、街の商店街に並ぶのと同じようなお店が立地するようになってきたのである。スーパーにしても、本格的な品揃えの床面積の大きなものがみられるようになった。日曜日、街の商店街のお店はどれも閉まっている、しかし、駅の中のお店は開いている、しかも、街の中の店と変わらない、となれば、駅にお客さんはやってくることになる。駅におけるこのような商業機能の集積は、店舗の営業規制の網をくぐり抜けるように進行してきたともいえよう。


インスブルック駅の地下。右手に本格的なスーパー。週末はレジに列ができる。奥は駐車場。ここでも鉄道と自動車の接続が図られている。

  駅は今や、その町において主要な商業集積地のひとつとなりつつある。そして、交通のノード、結節点として駅の機能強化が図られているともいえる。「ショッピング・ステーション」という表題はミスではない。駅がショッピング・センターやモールのようになっている状況は、まさに、「ショッピング・ステーション」と称してよいのではないか。こうした駅への商業集積によって、消費行動が変化し、加えて、町の商業の分布なども変化するかもしれない。加えて、駅への機能の集中は商業にとどまらず、業務機能においても見られることである。これについてはまた今度。

 
最近、改修が終わったウィーン西駅。外見は昔とそんなに変わらない。向こうはオフィスビル(一部、商店)。



ウィーン西駅構内。きれいになったものだ。


地下2層がショッピング街となっている。



  
 



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