2016年4月13日水曜日

ライプニッツ地誌研究所の「今月の地図」(1)

 ライブニッツ地誌研究所IfLは、ライプチッヒにあるドイツで唯一の大学外の地理学研究機関である。現在、75名が従事し、年間予算は430万ユーロにのぼる。

 この研究所の起源は1896年にまで遡る。当初は、ライプチッヒ民俗博物館が、地質学者Alphons Stübel のコレクションを展示していたが、1907年に地誌学博物館として独立し、1930年代以降は研究にも従事した。第2次大戦後、1950年から、 Edgar Lehmannの指導の下で、ドイツ地誌研究所として旧東ドイツの中心的な地理学研究機関となる。1976年以降、科学アカデミーの中における、地理学・ 地生態学研究所IGGとなっていく。

 IGGの解体後、1992年に現在のかたちの地誌学研究所が設立される。ちょうどその年、この研究所を始めて訪れた時には、まだライプチッヒ博物館の中にあった。書庫も見せてもらったが、それまで見たこともない古書、地図類がところせましと並んでいた。1996年にライプチッヒ郊外の現在の場所に研究所は移転した。2003年にLeibniz-Institut für Länderkundeと改称する。ライプニッツLeibnizは、かの著名な数学者にして哲学者、研究所の位置するライプチッヒの出身である。

 この研究所は、今日、ドイツにおける地誌学研究の中心として、Beiträge zur Regionalen Geographie、Europa Regionalなどをはじめとする各種刊行物を発行している。

  さて、この地誌研究所のホームページhttp://www.ifl-leipzig.de/en.htmlの右に、「今月の地図」として、特定のトピックに関する主題図が掲載されており、定期的に入れ替わる。現在トップにある主題図は、ドイツのワイン生産に関するものである(http://aktuell.nationalatlas.de/wein-2_03-2016-0-html/)。

 なんでもEUでは、2016年からワイン用ブドウ栽培の認可制度を変更したとのことである。これまで、ワイン用ブドウは生産過剰の状態にあり、生産面積の拡大は認められなかったが、加盟国は、年間1%までの栽培面積の拡大ができるようになった.背景には、ワインの世界市場の変化、とりわけ、ヨーロッパ以外においてワイン需要が拡大し、ヨーロッパにとって新たな輸出のチャンスが増えたことがある。

 この地図をみると、ドイツにおけるワイン生産地帯(13の原産地認定ワイン生産地域がある)は、ドイツ南西部に集中している。なかでも、ライン川とその支流(モーゼル川やマイン川など)流域が主要な生産地域で、これらを含むラインラント・プファルツ州とバーデン・ビュルッテンベルク州でドイツワイン生産の9割近くを占めている。

 ドイツと言えば白ワインである(地図の凡例のWeßer Rebsortenが白ワイン Rote Rebsortenが赤ワイン)。しかし、近年、赤ワインの生産が伸びており、赤ワインの面積比率は24.1%(1999年)から35.1%(2014年)に増加しているという。

 そしてドイツの白ワインと言えばリースリングである(白ワインの一番上の黄色)。ドイツのワイン用ブドウ品種の4分の1がリースリングであり、ここ15年間、そのシェアに大きな変化はない。そして、リースリングが卓越して生産されるのは、13の生産地域のうちモーゼルとラインガウである。一方、他の白ワイン用ブドウ品種には大きな変化があり、グラオブルグンダー(ピノ・グリ)やバイサーブルグンダー(ピノ・ブラン)が著しく増加し、一方で、ミュラー・トゥルガウやケルナーが減少している。

 赤ワインで最も生産が多いのは、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール、凡例の赤)であり、南部、バーデン地方で高いシェアを占めている。近年、赤ワインで生産が伸びているのは、ドルンフェルダー(凡例のオレンジ)であり、赤ワインの中で栽培面積は第2位である。ドルンフェルダーは色の濃いワインで、元来は色づけのために他のワインに混ぜていたという。しかし、今日、現代的なワインとして人気を博している。

0 件のコメント:

コメントを投稿