2019年4月29日月曜日

ライプニッツ地誌研究所の「今月の地図」(2)-2:ドイツのビール

 前回の続きとなるが、2枚目の地図をみていただきたい。これは、2004年から2017年にかけてのビール醸造所の変化を示したものである。凡例の一番上の黄色い丸が、この期間において変化なく存続しているもの、次のオレンジが新しく設立されたもの、最後の青が閉鎖された醸造所を示している。
 この時期における顕著な変化は、ハンブルク、ベルリン、ニュルンベルク、フランクフルト、ライプチッヒといった大都市において中小規模の醸造所ができた一方で、ほぼ全国のどの地域においても、非常に多くの醸造所が閉鎖されたことである。この間に醸造所の全体数は増加しているものの、これは多くの新規参入が、少なくはない閉鎖を上回ったことによる。こうした醸造所の閉鎖は、全ての規模の醸造所にみられるという。
 3枚目の地図は、ドイツにおける10大ビール醸造所の分布を示している。これらの大醸造所は、それまで独立して経営されていた中小の醸造所を傘下に収めることで規模を拡大してきた。図中の四角が、10大ビール醸造所(コンツェルン)の立地を示しており、小さな丸が、傘下のビール醸造所である。これらのコンツェルンは、全国を市場としており、テレビなどでも宣伝がなされて全国的に知られている(私もほとんど知っている)。凡例の下から2番目のCarlsbergカールスバークは、ハンブルクを拠点として、日本にも輸出されスーパーなどでみかけることがある。上から6番目、Paulanerパオラナー・グループは、ミュンヘンに位置し、バイエルンにおけるいくつもの醸造所を傘下とする。パオラナーという銘柄自体、とりわけ小麦のビール、ヴァイツェン・ビールが著名だが、日本にも入っており、飲めるお店もある。これもまたよく知られたレーベンブロイも、このグループの傘下であることが見て取れる。
 私の好きな、ピルスナーらしいピルスナーであるJeverイェーファーは、北部フリースラント地方のJeverで製造されているが、フランクフルトを拠点とするRadebergerラーデベルガーの子会社となっている。このラーデベルガー・グループは、2017年時点で、11億5千万リットルを生産し、世界のビール生産の0.6%を占めて20位に位置する。
 このように、ドイツにおいても世界や日本と同様に、クラフト・ビールを製造する中小の醸造所が増加している。そして、これらは、消費地である大都市を中心に立地する傾向にある。一方で、大醸造所に中小の伝統的な醸造所が飲み込まれ、生産がこれら大醸造所に集中するという方向性もみられる。ここで、ブレーメンにある Anheuser-Busch InBevアンハイザー・ブッシュ・インベブは、世界のビールの3分の1を製造するベルギー資本であり、パオラナー・グループには、オランダのハイネケンが3割の出資をしている。すなわち、ドイツのビール製造は、ローカル化が進展している一方で、グローバル化の波に飲み込まれつつあるともいえる。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿