2023年11月13日月曜日

あついウィーン!

  コロナ禍の中、海外へでかけることもままらなかったが、この2月にハンブルクやベルリンへ、そして、8月から9月にかけてウイーンとチロルを訪問する機会をえた。8月のお盆過ぎに、まずウィーンに行く。夏にヨーロッパに行く楽しみの一つは、暑い日本から逃れられるということであった。今夏の猛暑から脱出できると、いざウィーンに乗り込んでみると、いやはや暑いこと、暑いこと、、、日本と同じような暑さである。ウィーン市当局が高温注意報を出していたほどである。

 ウィーンは、チェコのプラハよりも東にあり、実はヨーロッパでも内陸に位置する。大西洋から離れており、大陸的な気候を有し、それなりに夏は気温が上がり、冬は冷え込む。過去にウィーンを訪れた時にも、エアコンのないホテルで、窓を開け放していても暑くて寝つかれなことがあったし、エアコンがなく蒸し風呂のようになった路面電車を顔を真っ赤にした運転手が運転していたこともあった。むろん現在では、ホテルもエアコンがつくようになり(むろん、ないホテルも)、路面電車や地下鉄にもエアコンが装備されるようになった(ついていなかったり壊れているものも!)。ただ石畳の道の照り返しの強さは相変わらずで閉口する。

 今回はウィーン中央駅近くに宿をとった。ウィーンにもともと中央駅はなく、かつてのウイーン南駅が改修されて2014年に中央駅とされたものである。ヨーロッパの主要都市では、町の中心に鉄道が乗り入れず、都心の周辺に行きどまりのいわゆる頭端式の駅が設けられる場合が多い。ウィーンの場合、西の方からの路線の頭端式の終着駅がウィーン西駅、南方からの路線の終着駅がウィーン南駅であった。これらの駅は、ウィーンの外環状道路に面している。この外環状道路は、かつては、オスマントルコとの戦争に備えて設けられた第2防御壁の跡地である。ちなみに、内環状道路は旧市街のすぐ外側を走り、リングRingと呼ばれ、両側に王宮や美術史博物館、歌劇場が面している。このリングは、かつては、やはり防衛のために設けられていた幅450mの空き地、緩衝地帯であり、後の都市計画によって環状道路と施設が整備されたものである。ウィーンの街の拡大はまず、このリングとなった緩衝地帯と第2防御壁の間で生じ、鉄道駅も当時の街の縁に造られたといえる。

 ウィーンはオーストリアの国土の東のはずれに位置している。そして、第2次大戦後の冷戦時代、ウィーンは鉄のカーテンのすぐ西、ヨーロッパの西側陣営のはずれに位置していたといえる。私がウィーンを最初に訪れたのは、1986年のことであるが、なんとく老成した活気の感じられない印象をもったものである。当時は、ウィーン西駅が、オーストリア西部からの列車、そしてドイツからの列車の終着駅となり、発着本数も多く、周辺にホテルも立ち並び、ウィーンの玄関口という趣があった。ところが、である。2014年、ウィーン南駅がウィーン中央駅に改修され、ウィーン中央駅が主要な列車の発着駅となり、ウィーンの玄関口にとってかわった。オーストリアの西、インスブルックやザルツブルクからの特急列車、ドイツからの国際列車、チェコやハンガリーからの国際列車も、この中央駅の発着となり、さらには、これらの列車の多くが、ウィーン空港まで運行するようになった(参照:Combined Transport)。行きどまりの頭端式ではなく、通過式の駅となり、ウィーンにおける接続がよくなっただけではなく、各地から鉄道による空港へのアクセスが確保されたことになる。こうした通過式の中央駅の設置は、ウィーンだけではなく、ベルリンでなされ、シュツッツガルトでも進められているなど、ヨーロッパ各地でみられる。

 こうした中央駅の設置は、 単に交通ターミナルの集約にとどまらない意味をもつ。まず、新しい駅は、多層階で、さながらショッピングセンターのように多くの店舗が配置される。ウィーン中央駅は、BahnhofCity「駅の街」と称して、2万ヘクタールの売り場面積をもち、約90の小売店舗とレストランを有する。こうした店舗群は、駅を利用する人々だけではなく、ショッピング自体を目的にした顧客を想定している。それは、600台分の駐車場が用意されていることからもみてとれる。ちょうど日本のJR東日本のecuteのようなものであり、駅ナカにおける商業施設の併設は、やはりヨーロッパ各地で行われていることである(参照:ショッピング・ステーション)。

ウィーン中央駅
ウィーン中央駅正面入り口

 
ウィーン中央駅構内

  駅ナカに加えて駅チカ、駅自身だけではなく駅周辺の開発により、オフィス地区や住居地区が配置されている。というのも、頭端式から通過式に駅を改修することで、また、貨物駅を廃止することで、それまで多くの面積を占めていた鉄道用地の他用途への転換が可能になったからである。ウィーン中央駅の場合、駅周辺のベルベデール地区はオフィス街とされた。いくつかの開発区画があり、エルステ・グループ銀行の本社を中心としたErste Campus、STRAUSS & PARTNER開発による、オフィスに加えて、ホテル、住宅、ショップをもつベルヴェデーレ中央地区(QBC)、SIGNA 不動産開発によるThe Icon Viennaもオフィスに加えて、店舗、会議場などを有する。このように中央駅周辺に業務機能もまた集積をみている。

ウィーン中央駅の向こうにオフィス・ビルを望む 

オフィス地区

  さらに、中央駅の南、駅から少し離れたゾンネンヴァンド地区Sonnwendviertelでは、5500戸の住宅、13000人の居住人口、2万人の雇用をもつ職場、商業施設、学校、公園など、ひとつの新しい街が建設されつつある。駅とその周辺に再び、都市の機能を集積させようという試みであるといえる。かつてのウィーンとは違う。ウィーンの街は一方でまた熱い!

 

 

 

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